入口 > そこここにあることevent•exhibition•life > INDUBITABLY

INDUBITABLY


素材にはもともと“成り”の美しさと魅力があって、そこに人の手が加わることで得るのは決していいことばかりじゃないように思います。

例えば程良いくぼみを付けることで用途を与えることはできるのかもしれないけど、用を得ることで失ってしまうものもあります。

そこに作り手の都合やら意図なんかが入って来ると尚更で、素材の顔や性格なんてどこかに行ってしまう。

なにかモノを作り上げるとき、そういった恐さが頭をよぎります。


そんな折、素材の顔や性格を捉え、理解し、そっと寄り添うように手が加えられた美しいものに出逢うことがありました。

素材の顔、作り手の顔、両方が見えていてしっかりと納まるところに納まっているものを見ると、保たれた秩序というのか…やはり安心しますね。

美しい100年前の布は100年分の時間を閉じ込めたまま、作り手によって今の用を得て輝いていました。

全体として平和で、あれやこれやがいい意味で表に見えて来ない。


自分(作り手)と素材。


例えばそれだけで形作られるほうが好ましいのかもしれないですね。


薄暗い部屋の片隅に置かれた輪郭のはっきりとしない存在に、やさしくスポットをあてるような。

そっと手をとり、進むべき方向へ少しだけ導くような。


そんなことを想う今日この頃です。



手を伸ばし

たまった埃をふるい落とし

柔らかい感覚に触れた時

遠い空を探したり

見えない月に祈ったり

咲きそうで咲かない花のこと

折れそうで折れない枝のこと

見えそうで見えない遠い場所


それぞれが持つ

それぞれの場所


moblog_9c28f6e4.jpg


新しいスパチュラができました。

新しい…とはいっても、どちらかというと始まりに戻すといった工程でした。

アルビのころに使っていた粗雑なスパチュールを思い浮かべながらの作業は、埃を払いながら色褪せたアルバムをめくるようで、ワクワクしながらサクサク進む。

出来上がったものは見た目よりも持った感じが(従来の僕のスパチュラと比べると)一番の違いで、これまでの平たい板を持つ感覚から、丸い棒を握る感じになりました。

これまでのもの同様、ニギニギして自分の手に馴染むか確かめてほしいです。


moblog_6d18809a.jpg


5月も残りわずか。

春をもっと謳歌したいけど、わずかながらも梅雨の足音。

今も静かに雨が降っています。

今日もまた、うつろいに耳を澄ます夜が過ぎていきます。
2013-05-20